夏の風物詩が・・・

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 三人が所属するのはバスケ部なのだが、足腰を鍛えるために今回の夏合宿が組まれていた。三人が通う学校のバスケ部は強豪。ゆえに一年のうちに足腰を徹底的に鍛え上げるのだ。だからこそ、山の中の宿に泊まり、毎日のようにランニングや基礎トレーニングに励んでいる。  つまり、三人はまだ高校一年生だ。華やかな部活を夢見て入ったのに、夏合宿がこの有様では不満も出ようというもの。しかも折り返し地点のこの日は、よりによって今までで一番暑い。熱帯夜だ。 「そうだ」 「ん?」  暑さに負け気味だった和也がぽんっと手を叩く。そしてにやっと笑った。 「どうしたんだよ、和也。暑くておかしくなっちまったか?」 「いいや。暑いならば涼しくすればいいって思ってね」 「ほう。どうやって?」  挑発するように博が訊く。丁度よく寝る前の暇な時間。一体何をやろうというのかと期待する。 「ずばり、怖い話」 「――ああ」 「なるほど」  期待した博は残念という顔をし、太一はいいねと同意する。まったく対極の反応だ。 「何だよ、博。ノリが悪いな」 「当たり前だろ。怖い話なんて学校の怪談くらいしか知らないし、他は小豆洗いとか、有名な妖怪しか知らないし」 「ああ。まあ、怪談って言われてすぐには思いつかないけど」  博に言われ、言い出しっぺの和也も悩むことになった。たしかに怪談ってメジャーなものしか知らない。しかし、メジャーなものでは怖くてひんやり気分を味わえない。
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