8人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
三人が所属するのはバスケ部なのだが、足腰を鍛えるために今回の夏合宿が組まれていた。三人が通う学校のバスケ部は強豪。ゆえに一年のうちに足腰を徹底的に鍛え上げるのだ。だからこそ、山の中の宿に泊まり、毎日のようにランニングや基礎トレーニングに励んでいる。
つまり、三人はまだ高校一年生だ。華やかな部活を夢見て入ったのに、夏合宿がこの有様では不満も出ようというもの。しかも折り返し地点のこの日は、よりによって今までで一番暑い。熱帯夜だ。
「そうだ」
「ん?」
暑さに負け気味だった和也がぽんっと手を叩く。そしてにやっと笑った。
「どうしたんだよ、和也。暑くておかしくなっちまったか?」
「いいや。暑いならば涼しくすればいいって思ってね」
「ほう。どうやって?」
挑発するように博が訊く。丁度よく寝る前の暇な時間。一体何をやろうというのかと期待する。
「ずばり、怖い話」
「――ああ」
「なるほど」
期待した博は残念という顔をし、太一はいいねと同意する。まったく対極の反応だ。
「何だよ、博。ノリが悪いな」
「当たり前だろ。怖い話なんて学校の怪談くらいしか知らないし、他は小豆洗いとか、有名な妖怪しか知らないし」
「ああ。まあ、怪談って言われてすぐには思いつかないけど」
博に言われ、言い出しっぺの和也も悩むことになった。たしかに怪談ってメジャーなものしか知らない。しかし、メジャーなものでは怖くてひんやり気分を味わえない。
最初のコメントを投稿しよう!