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「ふふっ。これはもう俺の出番のようだな」
そこに太一の不敵な笑い声。俺は知っているぞと自信満々だ。
「え?太一ってそういうのに詳しい人?」
「いや、詳しいってわけじゃないけど、昔、じいちゃんから聞いた怖い話があるぜ」
「お、いいね」
太一の言葉に、乗り気でなかった博も聞く体勢になる。ではではと、太一は部屋の灯りを豆電球に替えて話を始めた。
「その昔、江戸時代の話だそうだ」
「お、本格的」
「茶化すなって」
手を叩く博に、集中しろよと和也は突っ込む。が、こちらも顔はにやにやだ。
「江戸時代のとある商家での話でさ。その家には綺麗な小袖があったらしい」
「小袖?」
「まあ、高級な着物だな」
「ほうほう」
「それは奥さんが大事にしているもので、旦那が奮発して買ったものだったらしい」
「浮気か」
「そうなのか?」
声を潜めて話す太一に向け、博と和也は展開を予想して問う。しかし、太一はにやっと笑うのみ。
「しかし、その大事な小袖がいつの間にか無くなっていたんだよ。奥さんはどうしたのかと思って旦那に問う」
「ほうほう」
「すると、ちょっとなと言って誤魔化したらしい。これは怪しいなと、奥さんは当然、疑う」
「借金かな」
にやにやと、博はどうしても先を予測したくなるらしい。和也も展開が解らずにドキドキとする。
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