夏の風物詩が・・・

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 釣られるように、二人も博が見つめる方向を見た。すると、先ほどまでは扇風機があった部屋の片隅に、見覚えのない綺麗な着物がある。 「あれって」 「小袖?」  三人の視線が集まると、するするっと着物から手が伸びてきた。そして、おいでおいでと手招きする。そこでもう、恐怖のどん底になった三人は大慌てで部屋から逃げた。 「出たっ」 「本物だあ」 「ぎゃあああ」  一体どこから着物が来たのか。三人が騒ぐなと怒った顧問の山田とともに部屋に戻ったが、そこにはもちろん着物はなく扇風機が回っているだけだった。 「ったく、疲れてるんだろ。早く寝ろ」  山田はそう怒ったが、三人は顔を引き攣らせることしかできず、ひんやりとした冷たい風が部屋を吹き抜けていくのを感じたのだった。
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