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裏女王様と幼馴染み
「うわ~ん、カズ~!」
「朝練後の汗臭い身体で抱きつくな」
教室に入るなり飛びついて来た亮太を引きずりながら、俺はとりあえず自分の席へと着く。
「ちゃんとシャワーで汗流したよ!」
俺の前の自分の席へと座った亮太はふて腐れたように反論してきた。
ここ聖都学園は学校にしては珍しく、運動棟にシャワーが完備されているので、バスケ部に所属している亮太も朝練後にそれを使ったのだろう。
「はいはい。で、今度は何だ?」
どうでもいい亮太の言い分を聞き流して、俺は呆れながらも聞いてやった。
すると、亮太は急に情けない泣き顔になる。
「佳奈ちゃんが……」
佳奈ちゃんって誰だ?
聞き慣れない名前に、俺は必死に記憶の中を探ってみる。
「ほら、一週間前の」
「ああ。合コンで知り合って付き合いだしたっていう……」
そう言えば少し前に
『新しい彼女が出来た!』
と、騒いでいたような気がする。
どうでもいいから、ちゃんと聞いてはいなかったが、確かそんな名前だったような。
「そう、その佳奈ちゃんが……二股かけてたんだ!」
「…………」
またか……。
今度こそ、俺は本当に呆れてため息を吐いた。
「なんだよ、幼馴染みが失恋したっていうのにその態度! 可哀想だと思わないのか」
俺の態度が不満だったのか、亮太がさらに喚いた。
「可哀想だと思う気持ちなんか、とっくに消え失せた。だいたい、お前が彼女取られるの何回目だと思ってんだ」
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