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俺と亮太は小学生のころからの幼馴染み……もとい、腐れ縁だ。
さらに小さいころに一方的に取り付けた約束を守ってなのか、亮太は彼女が出来たらもちろんのこと、好きな子や気になる子が出来ただけでも律儀に俺へと報告してくるのだった。
だから、そんな亮太の恋愛事情は全て俺に筒抜けなのだが、こいつはいつも付き合った彼女を他の男に取られている。
「今度の相手はイケメン眼鏡じゃないだろうな。また千歳に絡んでみろ。今度こそ本気で見捨てられるぞ」
俺が今、教室に姿が見えない親友・高瀬千歳の名前を出すと、亮太はばつの悪そうな顔をする。
佳奈ちゃんとやらの前に付き合っていた彼女の沙織は、亮太にしては珍しく数ヶ月続いていたが、それも二週間くらい前に終わってしまった。
眼鏡をかけたイケメン男に取られたのだ。
そして、沙織に振られたショックの八つ当たりでクラスメイトの千歳が「眼鏡をかけたイケメン」という理由だけで、亮太に首を絞められたことは、まだ記憶に新しい。
「いや、千歳には悪かったって。それに今回は眼鏡かけてないから大丈夫」
何が大丈夫なんだかよくわからないが、亮太があまりに自信を持って言うから、あえて突っ込まないでおくことにした。
「だいたい、なんでお前はいつもいつも浮気されるんだ? 女見る目ないな」
「彼女達はそんな軽い子じゃない!」
呆れて言った俺に、亮太はむきになって反論した。
「だったら、お前に男としての魅力がないってことか。アッチは? ちゃんと満足させてやってる?」
「あっち……って?」
亮太は何のことだかわからない、といった表情だ。
「アッチって言ったら、セック……」
「うわぁ~!」
わざわざ説明してやろうと思った俺の口を、亮太は慌てて両手で抑えてきた。
「ん、んんっ!」
「それ以上言うな~」
そう言いながら、亮太は俺の口から手を放そうとしない。
しかも動揺しているせいか、口と一緒に鼻まで必死に抑えている。
苦しいって!
「いてっ!」
俺が指に噛み付くと、亮太はやっと手を離した。
自由になった口で呼吸をしながら、俺は亮太に怒鳴る。
「お前、千歳の次は俺を殺す気か!」
「いや……千歳、死んでないし……」
亮太のくせにもっともな事を言ったのが腹立って、俺がキッと睨むとそれに気づいた亮太はうな垂れた。
「……ごめんなさい」
最初から素直に謝ればいいものを。
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