裏女王様と幼馴染み

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「だいたい、カズがあんなこと言うから……」  それでも亮太なりに言い分があるらしく、ブツブツと文句を言っている。 「あのなぁ、小学生のガキじゃないんだから……って、お前まさか、童……」 「んなワケないだろ!」  今度は俺の言いたいことが先にわかったのか、最後まで言い終わらないうちに亮太が遮る。 「だったら、そんな過剰に反応するな」 「カズがオープン過ぎるんだよ」  まあ、それもあるかもしれないが、長年の付き合いの俺から言うと、亮太はピュア過ぎると思う。  小さいころから成長したのはその長身の図体だけで、中身は昔と変わらず純粋そのものだ。  女の子を大事にするタイプだが、逆に女の子からは大事にされ過ぎて物足りない。  そんなところだろう。  そもそも、合コンで知り合うような女が、何の進展も望まないピュアな恋愛したがるわけないだろ。 「お前は相手を大事にし過ぎなんだ。だから『亮太くんっていい人なんだけどね』で終わっちゃうんだよ」 「そんなこと言ったって……」  亮太がしゅんとうな垂れた。  ああもう、鬱陶しいなぁ……。 「そのうち、沙織より佳奈ちゃんよりいい子が見つかるって」  亮太の頭をポンポンッと叩きながら慰めると、亮太がボソッと聞いてきた。 「カズは?」 「俺が何?」  聞かれた意味がわからず聞き返すと、亮太は顔をあげて近寄ってくる。 「カズはそういう子いないの? カズって結構人気あるのに、女の子との噂全然ないじゃん」 「興味ない」  俺があっさりそう答えると、亮太は不満そうに口を尖らせた。 「成績だってルックスだって、千歳や女王様に引けを取らないくらいなのに」 「おいおい、学園人気ナンバーワン、ツーと比べるなよ」    亮太の言う女王様とは、一年生ながらに我が聖都学園高等部の生徒会長を務めている深海優弥(フカミユウヤ)のことだ。  モデルの母親譲りで容姿端麗、勉強に運動なんでも完璧なお坊ちゃま深海優弥と、大人びたルックスと甘い言葉でなんでもそつなくこなすイケメン眼鏡の高瀬千歳は、いまや学園内の人気ナンバーワンとツーに君臨している。  そんな彼らと比べられる奴が他にいるわけがない。 「せっかくの一人暮らしで、家族の目も気にせず部屋につれ放題できるし……カズ、勿体ないよ! 彼女作ればいいのに」  彼女……ねぇ。 「面倒だし、女興味ないからいい」  俺がそう言うと、亮太はしつこく聞いてくる。 「なんで?」 「なんで……って。いいのか? 俺が女口説いたら、お前ますますチャンスがなくなるぞ。みんな、俺の方に来るからな」  俺が冗談でそう言うと、亮太が声を荒げてきた。 「俺は、そんな冗談が聞きたいわけじゃないよ!」 「うるさい。それ以上、その話するなら殴るぞ」 「え~……カズ、手加減してくれないんだもん」  とりあえず殴られるのは嫌なようで、亮太は独り言のようにブツブツ文句を言っている。  俺が彼女を作らない理由……か。  だってしょうがねぇじゃん。
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