山の花嫁

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「ここんち三人きょうだい? わたしんち八人」 「ふーん」 「わたし、八ばんめ!」 「へぇー」 娘がお腹が空いた、と訴えるで、「お菓子とかあったかな」と兄が探しに行った。 だいぶ長いこと帰ってこない。 娘はすっかり緊張も解けたのかよくしゃべる。 一人で娘の相手をしているのも疲れてきた。 「菓子ひとつ探すのに、いったいどこまで行ってんだ」 兄のトロくささを呪い始めたころ、はた、と気付く。 あれ、これ、おとなしく待ってなくてもいいんじゃないか? 御子は娘と屋敷を抜け出した。 娘の手を引き、山道を下る。途中で採った柿の実を二人して食べながら。 一見、仲睦まじい様子だが、御子は、もちろん娘と仲良くするつもりはない。 「よしっ。里が見えた」 夕日に照らされた人里が眼下に広がっている。 娘を追い返すためだった。 「また遊びに来てもいい?」 「だめ」 「また追いかけっこして?」 「あれ、遊んでるつもりだったの?」 あいかわらずにこにこ笑う娘に対して、御子は難しい顔をする。 「ほんと、おれ、お前むりだから。ごめんなさい」 はっきりお断りする。 娘は手を振って里へと帰って行った。 ようやっと厄介事を追い払えたと、ほっとして御子は山を登る。
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