0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここんち三人きょうだい? わたしんち八人」
「ふーん」
「わたし、八ばんめ!」
「へぇー」
娘がお腹が空いた、と訴えるで、「お菓子とかあったかな」と兄が探しに行った。
だいぶ長いこと帰ってこない。
娘はすっかり緊張も解けたのかよくしゃべる。
一人で娘の相手をしているのも疲れてきた。
「菓子ひとつ探すのに、いったいどこまで行ってんだ」
兄のトロくささを呪い始めたころ、はた、と気付く。
あれ、これ、おとなしく待ってなくてもいいんじゃないか?
御子は娘と屋敷を抜け出した。
娘の手を引き、山道を下る。途中で採った柿の実を二人して食べながら。
一見、仲睦まじい様子だが、御子は、もちろん娘と仲良くするつもりはない。
「よしっ。里が見えた」
夕日に照らされた人里が眼下に広がっている。
娘を追い返すためだった。
「また遊びに来てもいい?」
「だめ」
「また追いかけっこして?」
「あれ、遊んでるつもりだったの?」
あいかわらずにこにこ笑う娘に対して、御子は難しい顔をする。
「ほんと、おれ、お前むりだから。ごめんなさい」
はっきりお断りする。
娘は手を振って里へと帰って行った。
ようやっと厄介事を追い払えたと、ほっとして御子は山を登る。
最初のコメントを投稿しよう!