山の花嫁

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屋敷の玄関先で御子がからかわれているころ、里の娘も、自分の家にたどり着いていた。 「かよが帰ってきたぞー」 山へやった娘が帰ってきたと、村人みんなで大騒ぎしている。 山の上の貴族の別荘に、いつの間にか鬼が住み着いた。 恐れた里人は、娘を捧げる替わりに、里に降りてはこないでくださいという約束をした。 山に花嫁として送るということは、つまり鬼の餌、生贄として送るということだった。 しかし、ここ何回か、無事に帰ってくる娘が多かった。 「こりゃ見事な生地だな」 しかも、今回は上等な着物まで着せてもらっている。 村人は首を傾げた。 村の取り決めに逆らえず、やむなく娘を出した両親は、かよが帰ってきたことを泣いて喜んだ。 かよはあまり状況をわかっていなかった。 今日は綺麗な着物を着て、甘い柿の実を食べてご機嫌だった。
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