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じりじりと日光に照らされながら、白状するオレ。
だって、しょうがないだろ?
今は夏まっさかり。というか、ただいま絶賛、夏休み中!
小学四年生のオレ、桐谷聖也にとっては、一年に一度の貴重なバカンス(?)の季節!
というわけで、セミが鳴いているのは当然だし、オレたちが住んでるのは海辺の町だから、波の音がするのも当たり前。
つまり、そのせいでピアノの音なんて聞こえない。
「でも、ボクは聞こえたよ」
ぷう、とほっぺたをふくらませるトワ。
ちなみにこいつは、化け物なみに耳がいい。
いろいろな楽器の音を聞き分けるなんて、お手のものだし、どんなに小さな音だって、トワの耳は拾う。ここまで来るともう、超能力に近い。
これが天賦の才能というやつだろうか……
「あー、わかったわかった……んで? どっから聞こえたんだ、その音は」
「あっち」
トワが指さしたのは、海と反対側の高台というか、丘みたいになっているとこ。その丘は、木々にびっしり覆われていて、小さな森になっている。
「あっちって……あんな木がボーボーのとこに、人なんか住んでんのかよ」
そう言ってから、オレははっとした。
「し、しかも、あそこってさ……『出る』ってウワサの森じゃなかったっけ……?」
「『出る』って何が? クマ?」
「ちげぇよ、『出る』っつったら、アレに決まってんだろがっ。最初に『ゆ』がつくアレ!」
「ああ、ユーレイ?」
そう! 夏の風物詩の中で、オレが唯一キライなやつ。
海水浴もキャンプも夏祭りも大好きだけど、肝だめしだけは絶対にダメ。怪談とか好きなヤツの気が知れない。
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