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「て、ことは……!」
トワの声が急にトーンダウンする。
「あのピアノの音は……怪奇現象?」
「やっ、やめろよ、そーいうこと言うの!」
「じゃあ、たしかめにいこうよ」
……は?
かたまるオレに対して、トワはなぜか、天使のような満面笑顔。
「い、イヤイヤイヤ! たった今『出る』って話したばっかじゃん!」
「出たなら出たでいいじゃん。ユーレイの演奏なんて、なかなか聞けるものじゃないし!」
バカだろっ、呪われたらどーすんだ!
オレがそう反論しようと、口を開きかけたときだった。
「ニャー」
……そうだ、こいつの存在をすっかり忘れてた。
今の「ニャー」は、トワが飼っている子猫、クロの鳴き声。
トワの自転車の前に籠がついていて、その中にちょこん、と座っている。
本当は「クロード」っていう、猫にしてはシャレた名前なんだけど、略してクロ。だって、こやつ、黒猫だし。
「ほらセーヤ、クロが言ってるよ? 『行ってみる?』って」
「言ってねーよ、自分の都合よく解釈するなっ」
「でも、ちょっとした冒険みたいで、おもしろそうじゃない? それともセーヤ……もしかして、びびってる?」
「びっ、びび、びびってなんかねーよ!」
そうは言ったものの思いっ切り、震え声になってしまった。
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