七章 アンリのたからもの

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 なんというか急展開についていけず、ぽかん、と立ちつくすオレとトワ。 「えーっと……とりあえず、みんなについてくか。なあ、トワ」  とオレはトワをふり返って……ぎょっとした。  トワが、目からぼろぼろ涙をこぼしていたからだ。 「え、ええええええええ!? ど、どうしたんだ、トワっ。あ、足か? ひねった足が痛むのか!」  トワは首を横に振る。そして、小さな声でつぶやいた。 「こ、こわかったぁ……」 「へ?」 「ホントに血、吸われるかと思った……!」  あ、ああ! レグルスがトワの血を吸うって冗談言ったときか。でも、あのときトワ、かなり平然としていたじゃないか……  ……いや、違う。オレは自分の鈍感さにあきれ返った。どうして気づかなかったんだろう。  トワは、強がってただけだったんだ。友達のオレを守るために、必死で。  トワはしゃがみこんで、いよいよ激しく泣き出す始末。 「あ、あー! 泣かない泣かない! ほらっ、えらいえらい!」  オレはあわててポケットからティッシュを取り出す。 「トワぁ……シャルルがついてるから、泣かないで……」 「ミャオン……」  シャルルとクロも、心配そうにトワの体にすりよる。  オレたちは、必死になってトワをなぐさめ続けた。トワ、勇気出してオレのことかばってくれて、ありがとな。  もし今度トワがピンチだったら、親友のオレが助けるから。 「もう、泣かなくていいぞ、トワ」
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