一章 ここはユーレイ屋敷!?

3/14
前へ
/78ページ
次へ
 階段を上れば上るほど、空気がひんやりとしてくる。  空から聞こえるのは、小鳥たちのさえずり。  町のにぎやかな音は、とっくの昔に聞こえない。 「──なんか、まったく知らない、遠い場所に来たみたい」  トワがぽつり、ともらした。  オレは何も言わずにうなずく。  まさにトワの言うとおりだ。オレたちの町に、こんな所があるなんて知らなかった。気温も空気も、海辺とまるで違う場所。  海の香りの空気もいいけど、ここの空気はもっと透明で、とにかくおいしい。  そんなふうに空気を味わいながら登っていくうちに、頂上が見えてきた。 「よっしゃ、やっと着いたー!」  と喜んだのも、つかの間。  次に待っていたのは、草木びっしりの道! もはや、道と言うべきじゃないかも。でも、ここまで来たからには、進むしかない。  オレたちは草木をかき分けながら、前へと進んでいった。  すると、いきなりクロがトワの頭から飛び下りて、たっと走り出す。びっくりするオレの横で、はっと顔を上げるトワ。 「ど、どーした、トワ」 「聞こえた」 「え、あ! ピアノか?」 「うん。あっち!」  クロが走っていったほうを指さすトワ。  オレたち二人はクロの後を追って、どんどん進んだ。  草木をかき分け、早歩きが小走りになって、走って走って走って……  ──そして、ついに、たどり着いた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加