番外編 君と親友になった日

2/8
前へ
/78ページ
次へ
 * * *  ボク、天野永遠は、最初から桐谷聖也と親友だったわけではない。  だって、ボクらには、おもしろいほど共通点がなかった。初めて聖也くんを知ったとき、感じたのは『ボクとまったく違う人種だな』である。  けど、ボクはいつも彼を意識していた……いや、せざるを得なかった。  彼はとにかく声が大きい、というか、でかい。ボクは耳がいいから、聖也くんが遠くにいても、彼の大きな声が聞こえた。  やたら大きい、なのに、うるさいと感じさせない、不思議な声音。多分、凛として澄んだ、よく通る音だからだ。すがすがしくて嫌みがない。  休み時間。  ボクが教室で読書しているとき、彼はたいてい外でみんなとサッカーをしている。 「よっしゃ! やったあぁぁー!」 (あー、すごい歓声あげてる。きっとゴールが入ったんだな) 「ぎゃあぁぁー! マジかー!」 (わぉ、今度は叫んでる。さては点を入れられたかな)  本から顔をあげ、窓から運動場を見下ろすと、案の定、聖也くんが地面に突っ伏して悔しがってる。ボクはつい、吹き出した。 「ちょ、いちいちリアクションがオーバーなんだけど……!」  おもしろいなあ、と笑いが止められなかった。  おもしろいから、つい彼を観察する日々が続いた。  そしてボクは、いつの間にか、桐谷聖也という人間が、すっかり気に入ってしまったのだった。  聖也くんは裏表がなくて、まっすぐで、嘘がつけない人だ。そういう人は、見ているだけで気分がいい。  でもボクは、彼と友達になるための努力は、しなかった。聖也くんを観察しているだけで、じゅうぶん楽しかったのだ。  あと、彼とは友達にはなれないだろうな、と勝手に決めつけていた。  だって、彼とボクには、共通点が無さすぎる。まあ、だからボクは、彼に興味をもったのかもしれない。  別によかった。仲よくなれなくても嫌われてさえいなければ、それでいい。  最初は、そう思ってたんだけど。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加