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* * *
ボク、天野永遠は、最初から桐谷聖也と親友だったわけではない。
だって、ボクらには、おもしろいほど共通点がなかった。初めて聖也くんを知ったとき、感じたのは『ボクとまったく違う人種だな』である。
けど、ボクはいつも彼を意識していた……いや、せざるを得なかった。
彼はとにかく声が大きい、というか、でかい。ボクは耳がいいから、聖也くんが遠くにいても、彼の大きな声が聞こえた。
やたら大きい、なのに、うるさいと感じさせない、不思議な声音。多分、凛として澄んだ、よく通る音だからだ。すがすがしくて嫌みがない。
休み時間。
ボクが教室で読書しているとき、彼はたいてい外でみんなとサッカーをしている。
「よっしゃ! やったあぁぁー!」
(あー、すごい歓声あげてる。きっとゴールが入ったんだな)
「ぎゃあぁぁー! マジかー!」
(わぉ、今度は叫んでる。さては点を入れられたかな)
本から顔をあげ、窓から運動場を見下ろすと、案の定、聖也くんが地面に突っ伏して悔しがってる。ボクはつい、吹き出した。
「ちょ、いちいちリアクションがオーバーなんだけど……!」
おもしろいなあ、と笑いが止められなかった。
おもしろいから、つい彼を観察する日々が続いた。
そしてボクは、いつの間にか、桐谷聖也という人間が、すっかり気に入ってしまったのだった。
聖也くんは裏表がなくて、まっすぐで、嘘がつけない人だ。そういう人は、見ているだけで気分がいい。
でもボクは、彼と友達になるための努力は、しなかった。聖也くんを観察しているだけで、じゅうぶん楽しかったのだ。
あと、彼とは友達にはなれないだろうな、と勝手に決めつけていた。
だって、彼とボクには、共通点が無さすぎる。まあ、だからボクは、彼に興味をもったのかもしれない。
別によかった。仲よくなれなくても嫌われてさえいなければ、それでいい。
最初は、そう思ってたんだけど。
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