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ボクは昔から、誰とでも平等に仲よくやっていけた。
その一方で、特別に仲よしな友達はいなかった。読書やピアノが好きだから、一人で好きなことをする時間も大事だったし。
でも、もし、特別な友達をつくるなら──そう考えると不思議と、声のおっきい彼が思い浮かぶ。
学校から帰ってピアノを練習していたボクは、
「ねえ、母さん」
手を止めて、そばで練習を見守っていた母さんに尋ねてみた。
「あら、なあに?」
おっとりした性格の母さんは、長い髪をゆらしながら首をかしげる。
「特別な友達って、やっぱりいたほうが、いいかなあ?」
「あらぁ、別に無理して作らなくても、いいんじゃない?」
母さんはいつもの、ふわふわした笑顔と口調で言ったあと……めずらしく、ちょっとだけ真面目な表情になった。
「でもね、トワ。特別な友達になりたい、て思う子がいたなら──そのときは絶対、逃がしちゃだめよ?」
わかったわね? と、母さんは優しい笑顔で念をおした。
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