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「互いの良いところを認めあい、切磋琢磨しあえる関係──誠に素晴らしいでござる」
感心しながら、うんうんとうなずく竹兄。
ちなみに竹兄は今日も、袴にふりふりエプロン姿でティーポットを運んでいる。ていうか兄ちゃん、そのかっこうホントに、どうにかなんない?
ちなみに少し離れたところでは、あの大魔法使いレグルスが、イスにゆったり腰かけて日光浴をしていた。
膝にクロとシャルルを乗せ、もふもふの毛並みをなでて楽しんでる。なんか海外のセレブみたいだ。クロとシャルルは仲よくお昼寝中。
「っ……ふふっ」
で、レグルスは竹兄のかっこうを見て、ひそかにくすくす笑っていた。
やっぱり性格悪いぞ、この魔法使い。
「歌をきっかけにお友達になったなんて、素敵ですわ……! よかったら、お二人の『翼をください』を聞かせてくださらない?」
伴奏はぜひ、わたくしのピアノで! と、きれいな顔でオレたちに迫るセレナーデさん。
「もちろん、いいよ! ね、セーヤ!」
「マジか! 久々だけど、ちゃんと歌えるか……?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」
「お、おう……。でも、肝心のピアノはホテルの中だぞ」
ピアノのある部屋に一度戻らないと……って思ってたら。
「ピアノなら、ここへ運んであげよう──ほら」
レグルスが、す、と人差し指をふる。
その途端、
「うわっ!」
「わあっ!」
白い光とともに、その場にピアノが出現した!
当然驚くオレとトワ。今さらだが、本当にこの人、魔法使いなんだな……
「あら、ありがとうございます、ご主人さま」
セレナーデさんは驚くことなく、おっとり笑ってる。
「ご主人さま、さすがでござる!」
目を輝かせてレグルスを尊敬する竹兄。ご主人大好きな忠犬みたいだな。
「では、二人とも、さっさと歌うのだよ」
ケーキをハムスターみたいに口につめこみながら、なぜか偉そうな一二三ちゃん。
トワは意気揚々とピアノのイスに腰かけた。
「よーし、ぼくは伴奏弾きながら歌うから、セーヤもがんばれ! いくよ!」
やる気満々のトワに、オレもつい笑うしかなかった。
「よっし、のぞむところだ、トワ!」
──トワのピアノを聴きながら、歌を歌いながら、オレは思った。
トワに出会えてなかったら、きっとオレは歌が下手で、音楽が嫌いなままだった。
冒険をして、不思議な洋館を見つけて、つくも神ホテルのみんなと友達になることも、絶対なかった。
すべては、あのとき、トワが声をかけてくれたから。
(オレと親友になってくれて、ありがとな、トワ)
やっぱり、素直に「ありがとう」を伝えるのは、恥ずかしくて難しい。
だから、今は精一杯歌うことにする。
いつか、きちんと言葉にして「ありがとう」を言ってやるから、覚悟してろよトワ!
オレの考えてることなんて露知らず、トワは歌いながらオレに、無邪気に笑ってみせた。
<おわり>
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