一章 ここはユーレイ屋敷!?

4/14
前へ
/78ページ
次へ
 ……それを見つけたとき。  オレとトワは、驚きのあまり、しばらく言葉をなくしていた。  驚いて当然だと思う。想像してみてほしい。  森が急に開けて、大きなヨーロッパ風のお屋敷が姿を現した、その光景を!  お屋敷っていうか……お城? 宮殿?  とにかく、そう言っていいくらい巨大で立派な洋館だった。だいぶ古びているみたいだけど、白い壁がきれいだ。  深い緑色の屋根は、よく見たら日本風の瓦が使われていて、びっくりした。  ヨーロッパの物と日本の物が混じることで、かえってシャレて見えるから不思議だ。  後からトワが、こういうのを「和洋折衷」って言うんだって教えてくれた。  ただ、白い壁はびっしりとツタがはっていて、あざやかな緑の葉っぱが壁の大部分を覆っている。そこはイバラ姫の物語に出てくる、魔法にかけられたお城みたいだ。 「──すごい……!」  オレは、やっと言葉が出た。興奮して、体が熱くなったのが分かる。 「なんだここ……! すっごい場所だ!」  屋敷を取り囲むのは、階段と同じく、植物がデザインされたアイアンワークの大きな門。  その門のすき間から、屋敷の敷地内をのぞくオレたち。  どうやら庭もあるらしい……全然手入れされている様子はなくて、ほとんど森と一体化している。  なのに、花が自由に咲き乱れていて、緑があふれかえっていて、絵みたいにきれいだった。  庭の真ん中には、それは広い池があって、透き通った水をたたえている。なぜかそこだけ、日本風のアーチ型の小さな橋がかかっていた。  へんなの。でもすごい!  池にたくさん浮かぶのは、ピンクや白のかわいい花たち。 「スイレンの花だ……! すごくきれい!」  ようやくトワも口を開いた。  目がきらきらして、すごいテンションが上がってる。 「スイレンだけじゃない、ダリアやサルビアもいっぱい咲いてる! すごい、すごいキレイだよセーヤ!」 「トワ、さっきから『すごい』しか言ってねーぞ」  オレは思わず笑った。  まあオレも似たような感じだけど。  未知の場所を発見してハイテンションだったオレたちは、少し落ち着いてから、重要なことを思い出した。 「そういや、トワ。ピアノの音は?」 「んー、今は聞こえない」 「だよな。さすがにここまで来れば、オレにだって聞こえるだろうし。あと、クロはどこいった?」 「えーっと……」
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加