一章 ここはユーレイ屋敷!?

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 きょろきょろ、とあたりを見まわすトワ。  そして「あ!」と声を上げた。  トワの視線の先。門の隙間をくぐったに違いない。  クロが屋敷の敷地の中を、そりゃもう、ご自由に散歩していた。 「おい……たぶん、一応、人さまの家だぞ。勝手に入っちゃマズイだろ」 「でも、人の気配とか、まったくないよね……もしかして廃墟、なのかな」 「じゃあ、ピアノ弾いてたのは、誰なんだよ?」 「人じゃないなら、それはもちろん、ゆ──」 「ばっ、バカヤロっ、それ以上言うんじゃないっ」  なんて、やりとりをしている間に、クロは屋敷の玄関まで、ちょこちょこ近よっていく。  て、あれ?  よく見ると玄関の扉、なんか、びみょーに開いてないか?  と思った瞬間。  するりっ。  クロが扉の隙間をすりぬけて、建物の中へ入っていった。 「って、おい────!?」 「クロ────っ!」  思わず叫ぶオレとトワ。クロ、それ不法侵入だぞ!  でも、クロが戻ってくる様子がない。  ということは、つまり、オレたちがクロを捜しにいかなくちゃならない。  しかし、冷静になって考えてみると。  この屋敷、結構……いやかなりブキミ、かも。  だってイバラ姫の城みたいな洋館だぞ?  てことは、悪い魔女がいかにもいそうなわけでして。  尻込みするオレの隣で、 「困ったね……でも、しかたない。クロを捜しに、ここ、入っちゃおっか!」  セリフとは反対に、元気よく宣言するトワ。  なんか、めっちゃいい笑顔だし! 「なんで、うれしそーなんだよ、おまえは! ぜってー楽しんでるだろっ」  オレはビシィッと指をトワに突きつけた。 「だいたい門っ。門が閉まってたら、入れねーし」 「でも、鍵かかってないみたいだよ、ほら」  トワが軽く押すと、キィ、といとも簡単に開く門。  ああ……これはもう、覚悟を決めて、クロを捜しにいくしかない。 「わかったよ……じゃあ、行くぞ」  オレたちは一緒に、門をくぐりぬける。その瞬間、  ──ぞくっ。  オレとトワは同時に足を止めた。そして、思わず、お互い目を合わせる。  なんだ、今の。  なんか……  敷地内に足をふみ入れた瞬間、その場の空気が変わった気がする。  うまく言えないけど……あの門が境界線で、それを踏み越えたら、まったく別の世界へ来ちゃったような、変な感覚だった。
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