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「今日から新学期だな。準備は大丈夫か?」
「大丈夫だよ。今日は始業式と、教科書とか配られたりするから」
そう。今日は新学期が始まる日である。
1年の時に文理選択を希望しているから、俺は理系で、クラスは1組から3組のどこかになるはずだ。
新学期であるにも関わらず、学校は昼をまたいである。
「じゃあ、弁当これな」
「ありがと」
弁当と水筒を受け取り、リュックの中に入れる。
「よし、行けるか?斗真」
「うん、行けるよ」
小さい頃から俺が登校するときに、いつもこの掛声を言う。前はもっと掛声らしく言ってたけど、今はもう確認のような感じだ。
「京夜ー、斗真いくぞー」
とーさんが親父のことを呼ぶ。
これも日課で、俺を送り出すときは二人でという約束らしい。
「あー、はいはい」
適当な声で親父が玄関まで来る。
親父は俺と一緒のαだから、俺に執着しない。とーさんを小さいときから独り占めしている俺が嫌なのだ。まぁ、でも子供に向ける目を持たないってだけだけど。
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「おー、じゃあな」
今日も俺に見せつけるようにとーさんの腰をがっちりと掴んで手を振る親父。
誰も実母とそんな関係になんねぇよ。
手を上げてドアを閉める。
外は春特有の清々しい香りがした。
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