NECRO phobia

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 六月二十五日(月)──ボクらが参戦してから六戦目。  新人は九十六人。ボクらにもう負けは許されない。誰にも、この責任は譲らない。だから戦場へのゲートが開いて、うろたえる新人に言ってやった。 Voice>>All:ボクらはこの戦いにもう五度参加して生き残っている。敵を人間だと思うな。慈悲も『生』もいらない。弾丸と確実な『死』だけをくれてやれ  もはや柳隊長よりも人間味に欠けた気がした。それでいい。『人間』でいるのは地上だけ……ルナといる時だけでいい。ボクは殺人(キリング)マシーンにでもなってやる。  被害は三十五人。生き残った新人の六十一人は次の戦闘では経験者になる。  散々死者を出しておいて、今更思うけど、『ゲーム』で済んでいる時点でW・Wを辞めさせれば良いのだ。  けど、本物の戦争に召集されるなんて言っても信じないだろう。  仮に信じてくれたとして……新規の兵は減る一方だ。だから誰も辞めさせようとはしなかったのかもしれない。  ボクらもまた、暗黙のうちに見ず知らずのプレイヤー達を戦争に仕向けているのだ。  七月一日(日)──七戦目。  前回を生き抜いた新人同士が、帰りにおかしな事を言っていた。 「敵国ってズルイですよね! アンドロイド兵士とか。こっちなんか命懸けてるのに」  アンドロイドなものか。最初にボクが殺した敵は間違いなく人間だった。でも、それが戦う為の、生き残る為の知恵かもしれない。人間と思うなとは言ったけど、その発想は無かった。  〝人間を殺した〟よりは、〝アンドロイドを壊した〟方が罪の意識は少ない。そうと思えば、ボクだって最初にあんなに苦しむ事は無かった。  そのせいか、敵を殺す攻勢は一切の容赦が無かった。それでも被害は二十一人。  上出来だと言っていい。  七月十一日(水)──八戦目。  被害五十三。アンドロイドと戦うということが先行して、ただのアトラクションと思っていた新規の新人は全滅。半数近く減った事になる。こっちだって相当殺しているのに終わらない。  ちゃっかりタイチが生き残っていることに、ボクは少なからず彼の実力か幸運かを認めなければいけないと思った。  七月十三日(金)──九戦目。  被害は十三体。3Bがいつも以上に奮闘して見せたこともあったけど、大半が後方の石柱に隠れていたからという事もある。  夢の中でも戦争をしている時があるなんていう兵士もいたけど、ボクはそんな夢さえ見ない。寝ている時でさえ戦うなんてまっぴらという事だろう。夢と言えば、もうしばらく何も見ていない。  ここにいる時は、もしかしたら学校の方が夢なんじゃないかと思う瞬間がある。  ボクは本当のところただの兵士で、学校に通う学生のボクはただの憧れで……なんていう夢。アーマーが固まるから深くは考えないようにしているけど、授業中も席が隣同士なのを良い事に、人知れず繋いでいるルナの手が、存在がただただ欲しくなる。  何度戦っても、今日も『休戦』で、『終戦』じゃない。
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