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小説投稿サイト『セレクショングッド』では、七千文字以内が条件で、毎月、作品を公募していた。
毎月、お題が出される。お題に沿った内容で短編小説をアマ、プロ問わず、広く募集をするのだ。
しかも、受賞作品は、高名な出版社の短編小説集への、収録を検討してもらえるのだ。
『セレクショングッド』の会員で、小説家志望の赤丸悟がいた。
赤丸は、シリアスな長編小説を中心に書いており、七千文字以内の作品を描くのは無理であった。
しかし、彼は応募要項を熱心に一字一句読んだ。
一文に目がとまる。
『連載中の作品は、応募期間終了時点での完成度で判断します』だ。
「六千九百文字まで、作品を公開して、あとは『連載中』にする。結果発表まで更新しないでおこう」
千作品以上から数作品だけ受賞するのだ。日本で一番難関な、東都大入試より難しいはずだ。
自分には無理だ。赤丸はそう悟った。
しかし、もしかしたら。商業デビューと言う名前の天使が誘惑する。軽い考えで、三万文字を越す、長編小説を『セレクショングッド』に投稿した。書き溜めしてあるが、六千九百文字になったところで、公開をストップする。
***
一か月を過ぎて、赤丸は、作品を投稿したことも、公募をしたことも忘れていた。
公募の結果は受賞である。しかも、書籍化の依頼があり、七千文字以内でまとめる必要に迫られた。
「二万文字を越すのに、残り百文字に短くできない。もう、これしかない!」
赤丸は、額に汗をかきながら、作品の最後を結ぶ。
”このあとは、読者諸賢の想像にお任せしたい”
***
赤丸への読者からの反応は、批判が多い。
〈あなたは、読者を舐めている〉〈文学を軽く見ている〉〈終り方が嫌い〉
怒られまくりだが、一部の読者は、作品を好意的に受け止めてくれた。
〈短編なのに、打ち切りみたいな終り方で面白い〉
赤丸は、自分のSNSやブロフで多数派読者の批判に答えた。
〈あの終らせ方は、あえてです。わざとです。意図したものです〉
赤丸は、短編作品を中心に発表するプロ作家になれた。
短編なのに、打ち切りやページが足らなかったような終らせ方をする。しかも、シリアスな文体を使い、いきなり終らせる。アナーキーな作風で、読者を笑わせてくれるコメディ作家としてだ。(完)
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