青春あんびばれんと

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 そして美里は遠くを見るようにこう言った。 「楽しかった夏休みが終わっちゃう、夏が終わっちゃうって寂しさと、手持ち花火の儚(はかな)さとで、すごく楽しいのに なんだか最後 ジーンとするんだよね。 古いフィルム映画を見てるみたいで…」 そう話している途中で美里が、 「あっ、ちょ、ちょっとゴメン。 クッキーが散歩に戻りたいんだって。 わたし もう行くね」  子犬にリードを引っ張られて体を持っていかれながら、俺の方を振り向き、少し早口でしゃべった 「道祖神さんに謝っておくのよ! わかった? 花火、誘ってくれてありがとう。 あとでね。 バイバ~イ」 (あぁ、白いワンピースを着た妖精が行ってしまった……)  俺は散歩に戻りたがっている子犬に、それを断念させる術(すべ)を教えてくれる学校があれば迷わず通っただろう。 「道祖神さん、さっきはペシペシ叩いたりしてごめんなさい」  俺は道祖神さんの前にしゃがんで手を合わせて謝った。 こういうのって大事だと思うし、小さい頃から美里の言う事だけはちゃんと聞いてきた気がする。  「さてと、勇者はコンビニという名の道具屋へ行くとしますか。 消しゴムと、ノートと、あと、たくさんの花火を買いに!」 「姫! 線香花火もゲットしますぞ。 お待ちあれ!」  空には とんぼが夏の終わりを告げるように、山から【秋】という名の友達を連れてきていた。
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