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今日の授業がやっと、やっと全部終わった。
(やった~! 美里と帰れる。 ルンルンだわ、ルンルン。 それにしてもルンルン気分の、ルンルンを最初に言い出したヤツ マジ神センス)
だが俺は、美里との約束をまるで忘れているかのように、サッと席を立ちシレ~っと帰ろうとして見せた。 それに気づいた美里が俺に向って、声には出さないが口の形だけで、
「あ・と・で・ね」
と言ってうれしそうに胸の横で小さく手を振った。
その可愛さに思わずニンマリするのを美里に、そして慎吾の野郎にだけは見られないように、
「そう言えばそうだったな」の表情をしてからダルそうに振り向いて美里に背を向け、歩き出しながら「おぅ」って感じに手を小さくシュッと上げた。
「クラス委員か、あいつも頑張ってるよな」
校門で美里を待っている間、俺は美里が今やっているクラス委員を決めた日のことを思い出していた。
その日までに1人決めなければならなかったのだが、そんな大役がすんなりと決まるはずもなく
「いい加減 誰かやってくれよ!」
「早く決めてくれないと部活の練習に送れるんだけど!」
「僕、塾があるので帰っていいですか~?」
それぞれが好き勝手なことを言っていた。 俺自身も正直そんな面倒なことはやりたくはなかった。 誰だってそうだと思う。
話し合いは平行線のまま、その平行線の2本の線はどこまでも、どこまでも交じり合う気配はなさそうだった。 何か新しい意見が出るわけでもなく、時間の流れだけが淡々と自分の仕事をこなしていた。
殺伐とした重い空気が教室内に充満してきて、そろそろ限界が近いってときだった。
「わたし…… やります……」
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