第二話 忍び寄る殺意

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「……そうか。例の『殺意具現者』の動きはどうなっている?」 「かの男は既に日ノ國へ到着したようです。この街へと来るのも時間の問題かと」  殺意が具現化したもの、それが『殺衣』だ。それは人が熾烈な殺意を抱いたとき、稀に発現する歪んだ異能力。その力は絶大で、殺気を別の物質に変化させたり、武器を強化したりと発現者の性質によって大きく異なる。  その圧倒的な力を持つ、十人の傭兵によって構成された組織こそ、世界の頂点に立つ『傭兵団体連合』だ。通称『傭団連』。   傭兵の世界で生きるということは、そのバケモノ同士の戦いに身を投じるということでもある。 「……承知した。引き続き、調査と監視を頼む」 「かしこまりました」  風刃は眉一つ動かさないまま会話を終え、ベンチを立つ。  今回の仕事が片付けば、二年間苦楽を共にした綾ともお別れだ。それでも風刃は、やむを得ないと切り捨てるつもりだった。
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