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彼の師匠は、弟子を一瞥するとタバコから煙をふかし呟いた。
「ああ、お前はもう傭兵になるだけの実力を得たさ」
「そうか」
「なんだ。死と隣り合わせの世界へ足を踏み入れるってのに、大した胆力じゃないかタコ助」
師匠は目線を上げ、「ふっ」と笑い煙を吐く。
少年も澄んだ夜空を見上げ呟いた。
「殺るか殺られるか。それだけだろ」
「ったく誰だよ、こんな可愛げのない坊やに育てたのは」
少年には、子供らしさのかけらもない。師匠はため息をつき、苦笑しながらやれやれと首を振る。少年は微動だにせず反射のように答えた。
「あんただ」
「まあいい。これだけは覚えておけ」
師匠はゆっくり煙を吐くと、遠方に光り輝く街を見た。
「人生を豊かにするのは、素敵な人との出会いでも、やりがいのある仕事でもない。『自己研鑽』、これだけだ。自分の生き様を誰かに委ねるな。自責だけを前へ進む糧としろ。だから風刃……お前は死ぬなよ」
少年『黒瀬風刃』は頷くと、漆黒のナイフを鞘に納め師匠へ背を向けた。
――それが全ての始まりだった。
世界の終焉『界滅』へと至るための『英雄譚』の始まり――
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