第一話 日ノ國の巫女

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 彼の師匠は、弟子を一瞥するとタバコから煙をふかし呟いた。 「ああ、お前はもう傭兵になるだけの実力を得たさ」 「そうか」 「なんだ。死と隣り合わせの世界へ足を踏み入れるってのに、大した胆力じゃないかタコ助」  師匠は目線を上げ、「ふっ」と笑い煙を吐く。  少年も澄んだ夜空を見上げ呟いた。 「殺るか殺られるか。それだけだろ」 「ったく誰だよ、こんな可愛げのない坊やに育てたのは」  少年には、子供らしさのかけらもない。師匠はため息をつき、苦笑しながらやれやれと首を振る。少年は微動だにせず反射のように答えた。 「あんただ」 「まあいい。これだけは覚えておけ」  師匠はゆっくり煙を吐くと、遠方に光り輝く街を見た。 「人生を豊かにするのは、素敵な人との出会いでも、やりがいのある仕事でもない。『自己研鑽』、これだけだ。自分の生き様を誰かに(ゆだ)ねるな。自責だけを前へ進む(かて)としろ。だから風刃……お前は死ぬなよ」  少年『黒瀬風刃(くろせかぜは)』は頷くと、漆黒のナイフを鞘に納め師匠へ背を向けた。  ――それが全ての始まりだった。  世界の終焉『界滅』へと至るための『英雄譚』の始まり――
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