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第四話 最後の仕事
時は夜、蒼く透明な結晶に覆われ凍てつく道場で、一人の少女の命が奪われようとしていた。
漆黒の大刀『黒龍大刀』を両手で振り上げた長檻統二の下には、満身創痍の体でひざまづき無念に歯を食いしばる天宮凛華。
そして今、無慈悲にもその断絶の刃が振り下ろされた。ぎゅっと目をつぶる凛華。
直後――
「――っ!」
再び静寂が破られた。道場に響いたのは、肉を裂く不快な音ではない。鋼の激突する甲高い音だった。
「……え?」
頭上を見上げた凛華の視界を塞ぐのは、『片角が折れた鬼の仮面』を被った黒髪の青年。その面は白色で憤怒の形相をかたどっている。服は黒装束で、傭兵というよりは暗殺者といった風貌だ。
統二の大刀を受け止めているのは、その青年が逆手に持つ漆黒のコンバットナイフだった。
青年は横顔を背後の凛華へ向け呟いた。
「……無事か……」
目を見開き硬直していた凛華は、すぐその正体に気付く。
「その声、その後ろ姿……あ、あなたは……まさか――」
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