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瞬時に無数の剣閃が煌めいた。
急所を狙った鋭い突きが統二を襲う。機動力ではナイフが上だ。
風刃はひたすら突きを繰り出す。ただ速く。より速く。
統二は大刀と氷のナイフで応戦し、捌ききれない攻撃は結晶で防いだ。
「動きが不規則な上に速いな。だがそれでも、お前の攻撃が私に届くことはない」
氷結の盾を前に、速さは意味を持たなかった。
ナイフによる攻撃は、全て弾かれ欠けた結晶が宙を舞う。
「……ちっ!」
風刃は苛立たしげに舌打ちすると、隙を作った統二の腹部の氷を蹴り宙返り。それによって再び距離をとる。
その後方――
「そんな……どうして……」
へたり込んだ凛華は震える声で呟いていた。
内へ向かって凍っていく体の底で、なにかが熱を持ったように懸命に、強く祈りを囁く。
「お願いだから怪我しないで……黒瀬くん…………いえ……風刃、くん」
斬り合いに割り込むことのできない凛華。健気にも風刃の無事を案じている。
凛華の祈りが風刃の耳に届くと同時に、風刃は再び駆け出した。
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