第四話 最後の仕事

5/12
前へ
/165ページ
次へ
 ――回避は不能。 (それならば……)  風刃は慌てることなく、迫りくる凶弾を前に腰を屈め目を細めた。  迫りくる結晶一つ一つに宿る殺気を感じとる。  そして、右手に持つナイフを強く握りしめ―― 「視えたっ!」  刹那、幾多もの剣閃が宙を走る。  まるで張り巡らされたピアノ線のように。  その軌跡は無数の凶弾を切り落とし、的確に急所への直撃を防いでいた。 「なに! まさか、お前……殺気が『視えて』いるのか」  統二が驚愕に目を見開く。だがそれでも、彼が優勢であることに変わりはない。 「……くっ」  風刃はすぐ異変に気付く。彼の脇腹と左足が凍っていたのだ。防ぎきれなかった結晶が被弾し、傷口を凍結させていた。他にも、凶弾が掠った部分が多々ある。風刃の防御は最善の手ではあったものの、無傷で済むほど生易しい攻撃ではなかったのだ。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加