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――回避は不能。
(それならば……)
風刃は慌てることなく、迫りくる凶弾を前に腰を屈め目を細めた。
迫りくる結晶一つ一つに宿る殺気を感じとる。
そして、右手に持つナイフを強く握りしめ――
「視えたっ!」
刹那、幾多もの剣閃が宙を走る。
まるで張り巡らされたピアノ線のように。
その軌跡は無数の凶弾を切り落とし、的確に急所への直撃を防いでいた。
「なに! まさか、お前……殺気が『視えて』いるのか」
統二が驚愕に目を見開く。だがそれでも、彼が優勢であることに変わりはない。
「……くっ」
風刃はすぐ異変に気付く。彼の脇腹と左足が凍っていたのだ。防ぎきれなかった結晶が被弾し、傷口を凍結させていた。他にも、凶弾が掠った部分が多々ある。風刃の防御は最善の手ではあったものの、無傷で済むほど生易しい攻撃ではなかったのだ。
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