第五話 捨てられぬ過去

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「――きゃっ!」  前方から少女の悲鳴が響いた。暴漢にでも襲われたのだろうか。風刃も感じていたことだが、この街は目に見えて治安が悪い。風刃はそんなことを考えながらも、関わらずに素通りするつもりだった。  平常運転で風刃が歩いていくとすぐに問題の場所に差し掛かる。 「や、やめてください!」 「いいじゃん、いいじゃん。お兄さんたちと遊ぼうぜぇ」 「そうだよ彼女~」 「ゲヘゲヘ」  金髪を両肩の後ろで結んだお下げ髪の少女を囲む、頭の悪そうなちょい悪男三人組。少女は、薄いピンク色のニットに花柄のスカートで年齢は中学生から高校生ぐらい見える。心底困ったように眉をしかめ、不機嫌そうに口の端を歪めている。  対する三人組は、ひょっとこのような口をした筋肉質の男、出っ歯でボウズ頭の小太り男、金髪でガリガリに痩せ細ったもやし男だ。まさしくデコボコトリオ。彼らはニヤニヤと黄ばんだ歯を見せながら少女を取り囲んでいる。
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