行ってきます

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行ってきます

この町にさよならを告げる。 しばらくこの町には戻ってこないだろうから。 -やっぱりあの森に別れを告げたい- その思いで、足を伸ばした。 太陽が東から頭を出してから1時間が経った、まだ涼しいこの時間を選んで良かった。 とても気持ちがいい朝。 風が吹いて、青々しい木の葉が僕に「いってらっしゃい」と言ってくれてる見たい。 そんな景色に少しウキウキしながら近所の方に挨拶をしていく。 「おはようございます、おばさん。」 「まあ、るうくんじゃないの。どうしたんだい?そんなに大きな荷物。」 「お母さんとお父さんを探しに行くんだ。今日から、行ってくるよ。」 「そうかい、気をつけて行くんだよ。あ、そうだわ。ちょっと待っててね。」 「わかった、ここで待ってる!」 このおばさんは僕の家族のことをよくしてくれてる。 僕を両親がいない間、そばにいて下さった一人だ。 「はい、待たせてごめんよ。」 そう言っておばさんは本を持ってきた。 「おばさん、これなに?」 「外国の本みたいなんだけど、ルウくんのお父さんがいなくなった後、ここにお父さんが訪ねてきて、るうが俺を追いかけるって言い出したら渡してくれって言われたのよ。探しに行くならこれ持っておいき。」 そう言われ渡された本は二冊。両方ともとても重く古びていて、持ち上げるので精一杯。 驚いた僕はおばさんの方を思わず見た。 「あらら、まだ重すぎたかしら?」 ごめんね、と言って本を持ってくれた。 「そういえば、この本の一冊はるうくんが読んだことがあるって言ってたわ。」 「そうなの!?」 「ええ、確かそう言ってたと思うよ。」 「へぇーそうなんだ!」 「さ、リュック開けて、入れてあげるわ。」 「ありがとうおばさん!」 重い本が二冊、旅の仲間入り。 それにしてもこんなに重い本をお父さんが持ってきたと思うと何をしてるんだろうと想像がいっぱいできる。 「ありがとうおばさん!じゃあ行ってきます。」 「行ってらっしゃい、気をつけてね。」 「うん!」 森に向けて歩いていく。 昔、両親と仲良く歩いたことに思いを馳せながら。 ...それにしてもあんなに重い本、どこで買ったんだろうか...
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