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「いいえ。あなたの性格、すっごく好きだよ。わたしの性格とも相性ピッタリだったと思う」
咄嗟に首を横に振り、即答したその言葉に嘘偽りはない。
彼が言うのとは反対に、意見を押しつけられるのが嫌いで、なんでも自分で決めたい性格のわたしは、紳士的で、何をするんでも相談してくれる彼とたいへん馬が合った。
性格的な面においても、彼は理想の相手だったのだ
「それなら、どうして……あ、もしかして、顔? 最初から僕の顔が好みじゃなかったとか?」
「ううん。好き。どんなイケメンのアイドルや俳優なんかよりタイプだよ」
続いて彼があげた推測にも、わたしは即行で首を横に振る。
その、いかにも平凡だけど爽やかで優しそうな顔も、ものすごくわたしの好みにどんぴしゃなのだ。ていうか、初対面の際、まずは顔から好きになったといっても過言ではない。
その人懐っこそうな目も、ちょっと小振りな鼻も、ぷるぷるとした赤い唇もみんな大好きだ。
顔が嫌いだから別れる? そんなことあるわけがない!
「じゃ、じゃあ、体型? もっとマッチョなガテン系が好きだとか? それとも、ひょっとしてじつはデブ専だったとか? なんだ、そうと知ってればもっと暴飲暴食して太ったのにぃ……」
「ちょ、ちょっと待って! 誰もマッチョ好きでもデブ専でもないって! スタイルからしても、あなたの一見細身だけど、脱ぐとやや細マッチョよりの中肉中背な体型は理想的だよ? お肉も柔らかすぎず、硬すぎず……今すぐにでもかぶりつきたいくらい」
次には体型で嫌われたことを疑い、なんだか勝手に決めつけて悔しがる少々暴走気味な彼を慌てて制すると、それについても間違っていることを懇切丁寧に説明してあげる……のだったが。
「かぶりつきたい?」
思わず口を突いて出たわたしのその一言に、彼は訝しげな顔をして小首を傾げている。
「うん。でも、体型は確かに別れるのを考えさせた一番の理由かな? その体型が嫌いだからじゃなく、逆にかぶりつきたいくらいに大好きだから、嫌いなとこができちゃったっていうか……」
うっかり本音が漏れてしまったが、ま、別に隠すつもりもなかったので別にかまわない。
ちゃんとそのことを説明しなければ彼も納得してくれないだろうし、わたしとしても、この際だから、最後に声を大にして言っておきたくもある。
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