妄想癖

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妄想癖

 1匹の蚊を殺した。  血を吸いに来た蚊を、思いっきり掌で叩いた。    蚊は、その人間の前腕部に止まり、今から血を吸って、卵を産むつもりだったに違いない。  しかし、蚊は気づかれたのだ。  人間は蚊が触れたわずかな触覚を感知し、その部分を視覚で確認した。  蚊が血を吸い始めて10秒ほど経過していた。  もうそろそろいい頃か。  蚊がその場を離れようとした瞬間、そこに巨大で力強い掌が、真上から覆いかぶさり、考える間もなく、圧死。  蚊の命は、そこで尽きた。    蚊を殺した人間は、掌で自分の血を吸い潰された蚊を見つめた。  ただただ見つめた。
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