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「うや」
嫌と言ったつもりだが、手で口を塞がれ上手く言えなかった。
咲野さんの手だよね?
やっぱり起きているんじゃない!
「竜一……気を利かせてよ」
「天沢には触れさせない」
「何でそんなこと言うのさ。龍一には小百合さんがいるだろう?」
「この間会った時」
耳に息がかかる。こそばゆく、逃げようと身体を捩った。
だが更に私を縛る腕に力が入り、針が通る隙間すらないほど密着してしまう。
やだ、この体勢。目の前に薫さんがいるのに、私……
「はっきりと断ったよ。好きな女がいるって」
ガーン! という音が頭の中で鳴ったような気がした。同じ相手に二度失恋したのか。
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