No.23 Dreams come true

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 目立ったトラブルはなかったが、結局営業所へ着いたのは十三時半頃。急いで手を洗って紙袋を広げる。    可愛らしい紙のランチボックス。ちょっと俺には不似合い。  だけど嬉しく思ってしまうのは何故だろう。女性からの差し入れって感じがするからだろうか。  中身はカツサンド。桜乃のことだ、朝からカツを揚げて作ってくれたのだろう。手間がかかるのに、馬鹿だな。また緩む頬を慌てて引き締める。  あとはほうれん草入りの卵焼きに苺。苺なんて久しぶりに食べるかもしれない。 「何だ、彼女の手作り弁当か?」  ベテランの安岡さんが覗き込んできた。 「そんなんじゃ……ただのお節介なおばさんですよ」 「何だ、姉さん女房か」 「だから違うって」  だが安岡さんは俺の話を聞いちゃいない。楽しそうに食後の茶請け代わりにしていやがる。 「年上の女房は(かね)の草鞋を履いてでも探せ、っていうからな」 「だから……」  もういい。  カツサンドを口に頬張る。パンはふわふわでカツも柔らかい。  美味い! 「あっ」  使い捨ておしぼりも入っていた。もしかして配達途中、車内で食べるとでも思ったのだろうか。  あれ? まだ何か入っている。取り出してみると桜乃の名刺だった。
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