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「そろそろ行こうか」
「はい」
安岡さんと一緒に外へと出る。午後も日差しが強く暖かい。
「おっ、遠山の銀さんかい?」
「何です、それ?」
「時代劇を知らないのか」
呆れたようにため息をつかれてしまった。
「肩や頭に桜の花びらがついているよ」
髪に触れると花びらが掌の中へと落ちてきた。
確か桜乃が髪についた花びらを集めていたよな。
「ティッシュ、ティッシュ」
ポケットの中を探すが見つからない。
「ほら」
声と共に飛んできたポケットティッシュには、会社のロゴが入っていた。
「有り難うございます」
安岡さんに礼を言うと、花びらをティッシュの間に挟む。
これをどうしようと考えていたわけじゃない。ただ桜乃と同じことをしてみたくなった。
「五枚集めたら、俺の願いも叶うのかな」
そっと花びらを胸のポッケにしまう。
気持ちを切り替え午後の作業に取りかかった。
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