No.23 Dreams come true

47/123
前へ
/2125ページ
次へ
13  鉛筆の先で紙をコツコツと叩く。大きくなっていく点の塊。  バイトがないから一日漫画に集中できるはずだった。今日はネームを手直しして、担当の柿崎さんに見てもらおうと思っていたのに進まない。 「叶夢、できたよ~」  できたと言っても、美優が作ったわけじゃない。  紙袋にはテレビで度々紹介されている有名レストランのロゴ。無理を言ってテイクアウトしてきたのだろう。 「早く食べようよ。ここのフレンチ美味しいんだから」 「……分かった。その代わり食ったらすぐに帰れよ」 「ええ~何で!?」  面倒くさっ。  桜乃だったらこんな時……  安岡さんが言っていた、姉さん女房という言葉を思い出す。  桜乃は確かにいい奥さんになるだろうな。  その相手が俺ならいいのに…… 「って俺は何を」 「突然どうしたの」 「何でもない」  火照る頬を見られたくなくて、俯いたまま並べられたフレンチを食べ始める。  嫁、妻、奥さん……いや、その前に恋人だろう。  恋人になったらキスして、それから…… 「グホッ」  飯を喉に詰まらせ思いっきり咳き込む。 「ちょっと大丈夫!?」 「へ、平気だ」  胸を叩きながらペットボトルの炭酸水を飲み込んだ。
/2125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1980人が本棚に入れています
本棚に追加