No.5 口紅

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No.5 口紅

 遅くなっちまった。帰り際に課長が仕事を押し付けるから。  待ち合わせ場所のカフェのドアを開けると、すぐに琴乃さんを見つけた。 「遅れてごめん」 「気にしないで、大輔君」  彼女はそう言って笑うが、目の前のカフェオレはもうほとんど残っていない。 「出てご飯食いに行こうか」 「うん」  俺は席には着かず、彼女と一緒に店をでた。  歩きながら彼女がバックの中で何かを探している。 「どうしたの?」 「あった。大輔君すごい汗だから」  探していたのはハンカチだったのか。そういえば眼鏡にも汗がついている。  彼女が取り出したハンカチで俺の額の汗を拭いてくれた。
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