「孤独な鳥」

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その日も、いつもと同じ朝でした。 餌を求めて、マガモたちが飛び立とうとした時です。 彼は、遠くから大きな茶色い物体が走ってくるのを捉えました。 鳥ではありません。 聞いたことのない唸り声を上げて、突進してきました。 「おい!!ガキ!!逃げろ!!」 天空から マガモたちが叫びました。 彼は、悟りました。 やっぱり 自分は 殺される。 抵抗せず、目をつぶりました。 バサッ・・・ けたたましい羽音と共に、彼は宙に舞い上がりました。 彼は、草むらに降ろされました。 「・・・ブロー!!」 ブローが、彼を見つめていました。 しかし、すぐに崩れ落ちました。 「えっ・・・ブロー・・・」 彼は気づきました。 ブローの両足が、無くなっていました。 「ブロー!ブロー!!そんな・・・僕のせいで・・・」 「・・・ガキ・・・」 ブローは、静かに首を上げました。 「なんで・・・お前は・・・泣いているんだ・・・」 「だって・・・ブローは大切だから!!僕のせいで、こんなことに・・・」 「・・・そうか」 ブローは真っ直ぐに彼を見つめました。 「いいか・・・お前が泣いているのは・・・悲しいっていう気持ちを・・・よーく・・・知ってるからだ・・・」 ブローは、ゆっくり目をつぶりました。 動かなくなったブローと、言葉の出ないマガモたちに囲まれて、彼は初めて泣きました。 大粒の涙をこぼして 泣きました。 ガラス戸をひっかくような鳴き声が、空へ飛んでいきました。
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