「孤独な鳥」

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「ありがとうございます。助かりました。」 年老いたアヒルが、頭を垂れました。 アヒルの足から外した罠を、白鳥は解体して捨てました。 「宜しければ、お礼を・・・」 「いえ。結構です。」 白鳥とアヒルは、対峙しました。 「・・・あっ・・・」 アヒルは、短い声を出しました。 白鳥は言いました。 「私は、悲しみを知っています。だから、他の方を悲しませたくないのです。 私は、痛みを知っています。だから、痛がっている方を助けたいのです。 あなたとは、もう会わないでしょう。」 それは、とても美しい声でした。 白鳥は、白い羽根を広げ、空へ舞い上がりました。 アヒルは、その方向を、ずっと、ずっと、見つめていました。                           おしまい
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