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「母の 話」
昔むかし、貧乏な一家が住んでいました。
夫婦と、育ち盛りの子どもが2人。
小さな農園を借り、雨が降る日も、雪が降る日も、仕事に励みました。
しかし、努力を惜しんだ人間全てが報われるほど、世の中は甘くありません。
やっとの思いで稼いだ金は、その日の食費に消えました。
貪欲な貴族階級の者たちは、娯楽のために庶民の税を上げました。
その年は雨が少なく、食物はほとんど枯れてしまいました。
妻は、そんな境遇に耐えきれず、毎日のように暴言暴力を繰り返しました。
なので、子どもたちは、夫になついていました。
「今日も、子どもたちを殴ってしまったわ・・・」
妻は、毎晩机に突っ伏して、泣くのでした。
夜は、妻にとって、気持ちが安定する時間でしたが、同時に懺悔の時間でもありました。
「殴ったって、何にもならないじゃないか。」
「だって!!!だって・・・もう・・・」
夫のなだめにも耳を貸すことはありませんでした。
それほど妻は、追い込まれていたのです。
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