「母の 話」

3/8
前へ
/40ページ
次へ
夫の言う通り、話は全てついているようでした。 夫の友人が家に訪れ、話し合いはほぼ双方で行われました。 妻は、現実なのか幻覚なのか分からない思いで、その会話を聞いていました。 一週間後、夫は子どもたちを連れていきました。 妻は、見送りませんでした。 子どもたちは、やつれた妻を振り返りましたが、そのまま出ていきました。 「そうよ・・・私はあの子たちにとって、母親なんて言えないわ。」 妻は分かっていました。 自分がこれまでしてきたことは、「虐待」と呼ばれるものであるということを。それは、例えどんな理由があろうとも、容認されないということを。 気がつくと、妻は家の前の小道に立っていました。 一瞬何が起こったのか分からない妻でしたが、足元に落ちていた何かに気が付きました。 「これは・・・」 ほんのり温かいそれは、上の子のぬくもりでした。 「あの子が落としていったんだわ。でもどうして・・・」 妻は、小道を遠くまで見つめました。 所々に、それが細かくちぎられて、落ちています。 「・・・街と反対方向だわ。」 何かが2人に起こる。 妻は、反射的にそれを追いかけました。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加