「馬鹿な王様」

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「馬鹿な王様」

昔々、ある国に、物好きな王様がいました。 政治力はまずまずでしたが、一つ困ったことがありました。 王様の趣味は、珍しいものをコレクションすることでした。 しかし、巨額の資産を利用して、正反対の国から米粒程度の宝石を持ってこさせたり、珍獣を飼育しようとしたところ危うく食い殺されそうになったりと、その趣味は、趣味の領域を超えていました。 城の内外問わず、王様の趣味に皆が呆れ返り、王様への信頼は揺らいでいきました。 王様は、還暦をとっくに過ぎていましたし、王妃は数年前に亡くなりました。 娘も、遠い国に嫁ぎ、数ヶ月おきに便りが届く程度でした。 王様は、孤独でした。 だから、心にぽっかり空いた穴を埋めるため、趣味に興じていたのかもしれません。 「王様。お食事の準備が出来ました。」 「あぁ、すぐに行くよ。」 王様には、気になる女性がいました。 ジーナという、城に勤務してまだ半年の、若い女中です。 王様にとって、彼女は、他の女中とは違う何かを持っている気がしました。
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