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ジーナは、とても掟破りな女中でした。
スカートは膝まで上げ、胸元のリボンも結び方が自己流でした。
歩くたびに揺れるブロンドのロングヘアは、兵士たちの注目であり、女中たちの嫉妬と嫌悪でした。
しかし、機転の速さは、誰もが一目置いていました。
王様が彼女の存在を知ったのは、1ヶ月前の来客を交えてのパーティーでの事でした。
急に来客が1人増え、料理の材料が足りなくなってしまったのです。
料理人も、王様も頭を悩ませていました。
「メニューを変えてしまえば良いのではないですか?」
聞き覚えのない声に振り向くと、彼女が調理台のレモンを手に取って、香りをかいでいました。
「君!!勝手に入ってはいけないではないか!それに、毎回決まったメニューを出すのが、ここの伝統だ!」
料理長のいかつい声が飛びました。
「でも時間がないんですよね。」
ジーナは料理用のエプロンを身に着けていました。
「私たちが一番にやるべきことは、目の前にあるもので、1人でも多くの方をご満足させることです。違いますか?」
ジーナの芯のある物言いに、一同が惹きつけられました。
「ジーナと言ったね。ありがとう。君のおかげで助かったよ。」
パーティーの後、王様は食器を片付ける彼女に声をかけました。
彼女は、澄んだ青い目で王様を見つめました。
「私は自分の仕事をしたまでです。出過ぎた真似をしたことは、お詫び申し上げます。」
それからというもの、ジーナは王様にとって、何か特別な存在になりました。
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