「馬鹿な王様」

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ある日、城に2人の仕立て屋がやってきました。 世界各国を回り、自分たちの品を紹介する形で販売をする、いわば訪問販売型の仕立て屋でした。 「王様のコレクションを拝見させていただきました。何ともお目の高いこと!!そんな王様にピッタリのお品物がございます。」 長身の男が、小太りの弟子に箱を持ってこさせました。 「こちら、私ども自慢の一品でございます。ただの服ではございません!」 「・・・ただの服ではないとは、どういうことかな?」 王様は、聞き返しました。 「えぇ。何でも、馬鹿や嘘つき者には見えない、それはそれは不思議な服でございます!!さぁ、どうぞ御覧ください!」 男の合図に合わせ、弟子が箱を開けました。 「何と素晴らしい!!!」 「あんな美しい生地、見たことございませんわ!!」 「装飾も輝いている!!」 居合わせた皆は、口々に叫び、拍手喝采をしました。 王様は、服を購入しました。 部屋に戻り、もう一度箱を開けました。 そこには、何もありませんでした。
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