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王様はその晩 考えました。
自分は馬鹿だ。嘘つきだ。
でも、自分は馬鹿であると知っている。嘘だって、これまで何百回もついてしまった。
自分の弱みを、自分が知っているのだ。
でも、城の者たちは、
「馬鹿だと思われたくない」「嘘つきだと思われたくない」
その一心で、笑顔を作っていたようだ。
さて、どうしようか。
国王として、自分ができることはないだろうか。
王様は、1人で唸って考えました。
そして、1つの決断を出しました。
「自分が、代表して、最大の馬鹿になろう」と。
翌日 王様はパレードを開きました。
参列した国民たちは、そろって目を丸くしました。
王様は、上半身が裸だったのです。
一糸乱れぬ兵士の行進の真ん前を、堂々と歩いているのです。
やがて、1人の子どもが叫びました。
「王様は裸だ!裸の王様だ!」
人々は顔を見合わせました。
兵士たちも、女中たちも、下を向いてしまいました。
王様は、しばらく沈黙を貫いていましたが、やがて大声で笑い出しました。
「そうとも!私は裸なのだ!私には洋服など見えていない!私は馬鹿だ!しかし、馬鹿であることは、私にとって怖いものではない!」
国民も 兵士も 女中も 空を流れる雲さえも 止まった気がしました。
そして、だんだん笑いと紙吹雪が舞いました。
「裸の王様!万歳!裸の王様!万歳!」
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