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「女王様。これは、助けになるか分かりませんが・・・」
鏡は、王妃の前に赤い物体を転がしました。
「・・・リンゴ?」
「催眠作用のあるリンゴです。女王様、これはあくまで私の提案であり、選択権はあなたにございます。」
鏡は、王妃に耳打ちをしました。
王妃は、しばらくリンゴを見つめていました。
冷たい沈黙が、流れていきます。
「・・・どうして?」
王妃は問いかけました。
「どうしてこんなことをしてくれるの?」
「あなたが、私を見つけて下さったからですよ。」
「なんだこれ?へんなの!」
物置小屋にしまわれた鏡を見つけたのは、黒い瞳の女の子でした。
「お嬢さん。はじめまして。」
「うぎゃぁ!!鏡が・・・喋った!!」
「私は、このお屋敷に代々伝わる姿鏡でございます。長い間、忘れ去られてしまっていました。」
「代々伝わってないじゃん。それに、私はお嬢さんなんかじゃない!ソフィア・コーランド。」
「コーランド・・・では、御子孫の方ですね。大変失礼いたしました。」
「ちょっと黙って!今追われてるの!」
女の子と鏡は、息を潜めました。
「ソフィア!!どこにいるの!!キャメリアに謝りなさい!!」
遠くで、女性の声がしました。
「今のは・・・」
「お母さん。一応。」
「一応?」
鏡が不思議に思っていると、女の子は怒って言いました。
「だってさ!!妹ばっかり可愛がるんだもん!お父さんだって!
私はダンスもお勉強も苦手だけど、キャメリアはすぐにできるから。
もう嫌になっちゃった!」
「なるほど・・・妹様のおやつを横取りしてしまったのは、理由がおありだったのですね。」
「え・・・何で知ってるの!?」
「私は、真実を告げる鏡なのです。ソフィア様、人のものを獲ってはいけないことを、あなたは心から分かっていらっしゃるようですね。」
「・・・うん。」
「その御誠意があれば、妹様もお母様も、きっと許して下さいますよ。」
「でも・・・なんか・・・また同じことが起こりそう・・・」
「そうしましたら、またお話しましょう。ここは、いつでも開放していますよ。」
「うーん。分かった。あなたがそこまで言うなら、今日は謝ってあげるわ。」
女の子は、元気に立ち上がると、行ってしまいました。
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