「孤独な鳥」

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「孤独な鳥」

人間世界から、少し離れた水辺のお話です。 小さな大問題が起こりました。 若いアヒルが、子どもを5羽産みました。 母親譲りの黄金色の羽を持ち、愛くるしい子どもばかりでした。 たった一羽を除けば。 ホコリのようにくすんだ灰色に、ズングリムックリした体型、ガラス戸を爪でひっかくような鳴き声。 「彼」は、完全に別の生き物でした。 「これは・・・いやはや・・・珍しい光景ですなぁ。うむ。」 教授のドジョウは、銀縁眼鏡を上げ下げすると、水中動物の研究に戻りました。 「まぁ奥さん!まさか他の方との子ではないでしょうねぇ?」 「ご冗談はおよしなさいよ。この子に罪はないんだから~。」 「一人ぐらい個性があっても・・・ねぇ?」 噂好きのアゲハ蝶たちは、嘘か真か確証のつかない話で盛り上がって飛んでいきました。 彼は、ゆっくりと顔を上げました。 そこには、汚れ物を見るような軽蔑の目をした兄弟姉妹がいました。 そして 母も全く同じ目をしていました。 そこから何があったか、彼はよく覚えていません。
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