<第一話>

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 ***  ファラビア・テラ。それはこの宇宙で最も広大な土地を持ち、強大な軍事力と人口を要する銀河最強の惑星の名前である。  かつては小国がいくつも点在したこの惑星をひとつにまとめ、惑星国家として統一したのが初代ファラビアの王、クノス・ファラビアだった。屈強で何事にも堂々てしていたというその男は、強き者こそが正義であり弱きは罪という理念をまさに体現した存在だったと言っていい。  力は絶対。勝者になるためには、敗者に恩情などかけるべきではない。むしろ弱い者こそが悪。  いまやテラの民としては当たり前に周知されている考え方であるが、元を辿ればクノスの考えこそが根幹にあったことだろう。  ファラビア・テラは、クノスの教えを神格化し、宗教として人々に浸透させることで纏まった惑星だった。人々は王を、自分達を導く神の子だと信じ、崇拝してきたのである。貴族は神話の時代に、神の教えを従順に信じた使徒達の末裔。ゆえに王族と貴族は、その貢献に基づいた特別な扱いを受けることを許されている。――厳格な階級社会は、唯一無二として位置付けられた国教により、長きに渡り守られ続けてきたのである。  そしてその、末代の王こそ。ここにいる、リアナ・ファラビアなのだった。歴代でもまだ三人目でしかない、女王の誕生である。 『父上!やです!おべんきょうはやです、もうやりたくないです!』  幼い頃のリアナは、自分で言うのもあれだが――本当に我が儘のし放題であったように思う。とにかく、勉強をするのを嫌がった。小学校程度の教養は身に付けておかねばならないと説得され嫌々最低限の学びはしたものの、好き嫌いが激しいリアナの“お稽古”や“お勉強”はいつも長続きしなかったのである。  自分は将来女王になるのだと、幼い頃からわかっていた。  というのも、王族唯一の正統継承者はもはやリアナしかいなかったのである。  父の祖父である先々代の王は、父が子供の頃に事故で死亡。兄と姉も父が成人する前に流行り病にかかり、生き残ったのは実質父一人だけであったのである。  そして父も、再従兄弟の女性を妻に娶ったものの、苦労の末に産まれた子供はリアナ一人。王の血を重んじるがために近親者のみで婚姻を繰り返してきた結果、王族は非常に子供が生まれにくくなっていたのである。  そして母も、病にかかって幼いうちになくなってしまっていた。ゆえにリアナには父しかなく、父もまたリアナしかいないという状況が生まれたのである。
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