この物語はフィクションです。

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 タピオカとは――トウダイグサ科キャッサバという植物の根茎から製造したデンプンのことである。  このタピオカ粉を粒状に加工したタピオカパールをミルクティーに入れて飲むことが、現代日本ではオシャレであり一種のステータスと化していた。  そのタピオカが国政選挙に出馬したのがついこの間のことである。 「いやいやいや、ありえないでしょ。タピオカって……」 「だよねー! わりとまともな政策言ってたけど、所詮タピオカだよ? アタシが散々止めたっていうのに結局タピオカにしたんだと。信じらんないよねー」  大声で旦那を告発するB子は怒っているどころかむしろ嬉しそうですらある。B子が話すたびに、耳元の大きな金色のピアスが揺れてキラキラと光った。 「……あれ、一見それっぽいこと言ってるけど実際は全然まともじゃないよ。だって財源ないじゃない。お金ないのにどうやって政策実行するの。それに、後半の政策おかしすぎる。ちゃんと読んだの?」 「男って結局家庭のことは全部嫁に押し付けだからさ。仕事は出来ても家計とかぜーんぜんわかってないのよ。減税するならいいじゃんって感じ」 「適当ねぇ」 「あーあ、離婚しよっかなぁ」  そう言うB子だが、実際は離婚する気など毛頭ないのは知っている。これは不幸自慢という一種のマウンティング行為であり要は自慢なのだ。  C子もそれはわかっているが、なだめないとB子の機嫌が悪くなるため心にもない慰めの言葉を口にする。 「まあまあ。A男さんのせいで当選した訳じゃないし」
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