正義の王子様

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正義の王子様

「大きな声出されるとやっかいだから、口を塞いじゃえば」  美少女に言われるままに、口を塞ごうとしてくる分厚い手に、保は思いきり噛みついてやる。 「いでーっ!」  悲鳴とともに一人の男の手が緩んだ瞬間、保はめちゃくちゃに暴れて抵抗した。  けれど、多勢に無勢だ。すぐにまた押さえつけられ、今度はシャツを引き裂かれた。  もう保にはどうしようもなく、男たちを睨みつけるしかできない。  ――そのとき。 「保っ!!」  橘の声が聞こえたかと思うと、ふっと体が軽くなった。  ……橘先輩……、来てくれた?  見れば、橘が三人の男を相手に戦っていた……というより、橘が一方的に男たちをやっつけていた。  体格は三人の男のほうが大きいが、橘はさすがに陸上部のエースである。  瞬発力と、しなやかな体のバネを使った無駄のない動きで、あっという間に三人の男たちをのしてしまった。 「保っ! 大丈夫か!?」  橘が保の傍へやって来て、体を抱き起こしてくれる。  保は今になって体がガタガタと震えてきた。  橘が心配そうに聞いてくる。 「怪我はない? なにもされなかったか?」 「へい、き。服、破かれただけ……」  そう答えると、保は橘の腕の中に抱き込まれた。  橘はしばし保を強く抱擁すると、にわかに立ち上がった。  そして、茫然としている美少女たちのほうへと歩いていく。  その顔は、保が今まで見たことがないくらい怖くて、鋭い怒りを浮かべていた。  顔が端整な分、怒ると迫力があるのだ。
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